カテゴリ
1.最近出会った太宰さん ・逆行 ・新釈諸国噺 ・お伽草紙 ・黄村先生シリーズ 2.太宰文学考 ・『待つ』について 3.エッセイ・小説・その他 ・太宰です……。 4.駆け込み、謳え 5.太宰治で読書感想文を書こう! ・太宰治で読書感想文を!2012夏 6.この夏読みたい太宰治 ・この夏読みたい太宰治2012 ・『道化の華』事件の考察 7.撰ばれてあることの太宰と私 8.マイノスタルジア タグ
記事ランキング
検索
以前の記事
2012年 11月 2012年 09月 2012年 08月 2012年 07月 2012年 06月 2012年 05月 2012年 04月 2012年 03月 2012年 02月 2012年 01月 2011年 12月 2011年 11月 2011年 10月 2011年 09月 2011年 08月 2011年 07月 2011年 06月 2011年 05月 2011年 04月 blogranking
外部リンク
blogparts
その他のジャンル
ブログジャンル
画像一覧
|
太宰治『母』を「母の日」に再読。呟きによる感想をまとめてみた。
「母の日」にちなんで太宰治『母』を再読してみようかと思う。ついでに実況中継よろしくTwitterへと感想を呟いていくというのはどうだろう。うむ、我ながら名案だ。 冒頭から生意気な青年が登場するが、太宰さんの作品によく出てくるタイプ。初めはいけすかなく思うが、最後には好感を覚えるから不思議である。 作中、青年は軍服姿の鴎外を見て厭になったと言う。太宰さん自身が尊敬していた鴎外さへも、ここでは嫌悪の対象となっているのだ。 本作は終戦から2年もしないうちに書かれたものであるということに着目したい。 鬱積された軍隊への、あるいは戦争そのものへの批判が、ここにおいて為されているのであろう。 その後、主人公は青年の発言にいちいち惑わされる。過剰な自意識。太宰文学の根底には、いつも流れている。 主人公は青年に対して意地悪な考えを持つ。だが、気弱な彼は、結局それを実行には移せない。哀しき性か。 夜中、後悔と自責の念が主人公を捕らえる。胸を焦がさんばかりの鮮やかな心理描写。私の心を、鷲掴みにする。 共感こそが太宰文学の真髄。私にも、そんな夜が、ある。 さて、ここからがクライマックス。隣室の男女の会話に聞き耳立てる主人公。私も思わず固唾を飲む。 男と女は、ある一言をきっかけとし、母と子になってしまう。私も焦る。“電気を、つけてはいけない。聖母を、明るみに引き出すな!” 翌朝、意地悪な企みを放棄した主人公。その心中にあるのは仄かな安堵か、それとも虚無感か。私はその両方を感じた。 太宰さん自身、その複雑な家庭環境から、実の母親以外の女性から母性を感じていたと思われる。 そのことは名作『津軽』からも窺われる。本作もまた、実の母親以外からの母性が、テーマの一つなのであろう。 また、先に出てきた軍服姿の鴎外が、当時の父性に重なっているのではないかと考えた。すなわち古き体制である。 父性からの離脱と母性への回帰。それこそが、本作の大きなテーマなのではないのだろうか。この点について、いずれ熟考してみたい。 では、そろそろやめることとしたい。骨は折れたが、なかなか楽しかった。また機会があればやってみたいと思う。 最後に、恥ずかしながら告白するが、私も何だか母親に会いたくなった。勿論、実の母にである。電話でもしてみるか。それでは、この辺にて。
by oobayouzou
| 2012-05-29 23:23
| 1.最近出会った太宰さん
|
ファン申請 |
||