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太宰治『新釈諸国噺』より「裸川」を再読。
これも少々、骨が折れた。隠されたる真意が読みとれない。だから何度か読み直し、熟考を重ねた。そうしているうちに、ようやく「これだ!」ということに思い当たった。 これは単に、愚かな男の愚かな話などでは無い。これは、風刺小説である。いや、井原西鶴の原文自体が当時の世相を風刺する要素があったことから、これは当然であるともいえよう。 自らの美徳を民衆にまで押しつけようとするお上。それに対して男は、ささやかな抵抗を起こす。そして、そのささやかな抵抗を罰せられた後にも男は、引かれ者の小唄ともいうべき戯言をぬかすのである。 西鶴と太宰さんの生きた時代には約250年という開きがある。にもかかわらず、民衆は相も変わらず、お上に自らの美徳を押しつけられている。恐らく、この作品にはそういった風刺が多分に隠されているのである。 さらに、この作品が書かれたのは戦時中であった。太宰さんの師でもある井伏鱒二は次のように書いている。 「裸川」~井伏鱒二『太宰治集上 解説』より 井伏氏は、この作品の持つ真意に気付いていたに違いない。『黒い雨』著者でもある井伏氏。「さすがは、師匠!」といったところである。 戦時中、このように風刺を隠した小説を出すことは、相当勇気のいったことであろう。まさに、死をも恐れぬ行為である。 太宰さんは、自殺や心の病などに注目を集めやすい作家であるが、こういった一面を持っていたということを忘れてはならない。 だからこそ、大作家と呼ばれるのに相応しい作家なのである。太宰さんもまた、戦っていたのだ。 太宰さんが亡くなってから60年を過ぎるが、いまだに日本は変わらない。国民はただ、引かれ者の小唄を歌うだけ。せめて“黒い雨”だけは、勘弁願いたいものである。
by oobayouzou
| 2011-07-01 21:03
| ・新釈諸国噺
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